[吉岡宿の奇跡]5 最大の協力者

[吉岡宿の奇跡]1 吉岡宿を救いたい
[吉岡宿の奇跡]2 大きな一歩
[吉岡宿の奇跡]3 せがれの気持ち
[吉岡宿の奇跡]4 金のなる木と熊野牛王符
の続きです。

浅野屋
三浦屋に金を借りた額も含めれば、千両
目標額の半分を超えた。

穀田屋十三郎、気持ちの上で踏み込めず、後回しにしていたことがある

浅野屋は、吉岡宿では一番の商家
町をつらぬく大通りにひときわ大きな屋敷を構え、酒蔵が何棟も並んでいる
三つもの銘柄の酒をもち、これ以上の酒造家は近くにもない

十三郎は、浅野屋から穀田屋に幼い頃養子に出された。
どうしても、足が遠のく
もし、浅野屋が協力してくれるなら、計画は一気に現実味を帯びる

重い腰をあげ、菅原屋と共に浅野屋を訪ねた。

いざとなると、言葉がうまく出ない。
それでも、踏ん張って口を開いた。

このたび拙者は・・

懸命に話した。
これまでの経緯。三浦屋からもらってきた証文も見せた。

話せば話すほど浅野屋の家族はだまりこんでいく

それでも気持ちを入れ直して最後まで話した。

浅野屋様からも、相応のお金をいただきたいのですが

浅野屋全体に沈黙が流れた

しばらくして、弟の甚内が口を開いた。
ほんにこんなことになるとは。十三郎兄様は、お父様そっくりじゃのう。

十三郎殿。おまえさまに、ずっと黙っておったことがござる。
もう、隠しておく必要もなくなったので話す。
実は、先代の甚内が、臨終の床で、皆を集めて言い残したことがある

もはやわしも臨終が遠くない
わしには、中年の頃よりひとつだけ大願があった
それは、この吉岡宿の伝馬合力願いの事じゃ
何とかしてお上からこの吉岡宿に御救いをもらいたかったが、お迎えが真近ではどうにもならん
ここに年来ためてきた銭は他の事には使わないでほしい
おれがだめなら息子のおまえ。おまえがだめなら、孫の周右衛門と何代かかっても良いから
この志を捨てぬよう
どうか吉岡宿がたちゆくよう、この金を使って動いてほしい

そう言って、わしの手を握り、さも無念そうにする
末期の遺言、確かに承りました。
わたくしも年々銭をためて時期を待ちます。
それでも無理ならば、周右衛門に言い聞かせて、
必ずや御志を遂げさせます。
そうすると、少し微笑まれて逝かれたのじゃ

そんな
そんなことは、ひとこともきいておらなんだ

十三郎は泣きながら叫んだ

母様と考えたが、おまえさんには打ち明けなんだ。
どのみち、浅野屋の身代はあやしくなる
わしも、母様も、同じ気持ちじゃった
吉岡宿のために家財のすべてを投げ出す覚悟を決めた
おまえさんまで巻き添えにしとうはなかった

じゃが、親子っちゅうのは似るものよのう
お互いに知らんのに、おまえさんまで穀田屋を潰そうとなさる
こんな嬉しい話があろうか

すぐに五百貫文の証文を書いて渡した。

さらに翌日、甚内が追加の五百貫文の証文を持ってきた

もし、これで足りませぬなら

いやいや、これ以上出されては、本当に浅野屋はつぶれてしまいます。

シリーズの次回、いよいよ具体的に動き出します

[歴史]シリーズはこちら(少し下げてね)

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