「ん」がなかった。続きの続き。空海のチャレンジ

「ん 日本語最後の謎に挑む」から

「ん」がなかった
「ん」がなかった。続き

空海の挑戦
そんなこんなで混乱期
ひらがなもカタカナもない時期の頃です。
万葉がなに「ん」がない時代

あの、弘法大師・空海がある本を出します。
「吽字義」という本です。
もちろん漢字だけで書かれている。

阿、と、吽について書いている。
阿、は宇宙の始まりを表している
種。
そこからすべてが始まる。
ビッグバンなんて当然知らないのに
宇宙は、ひとつの種から始まるんだと言っている。

そして、吽。
吽は宇宙全ての終わりを表す。
終わりと言っても、それは絶望ではない。

むしろ完成。
般若心経でいう「空」に近い概念が「吽」
悟りを拓き終えた状態。

そこにおいて宇宙はまた、種に戻る。

かなもないので
もちろん、50音表もない
今なら、誰しもが
「あ」で始まり「ん」で終わる
はい、その通り。知ってます。

なんで、この時期に、あまたある文字の中で
「あ」を始まりと表現したんだろう。
そして、もっと不思議なのが「ん」

「ん」はまだない。
ないのに「ん」が終わりだと言っている。

3つの「ん」が発音として区別つきにくくなってきて、統一されようとしていた。
それを先取りして「吽」と表現しようとしたのかもしれない。
「吽字義」には、「吽」を「口を閉じて発する音」としているから
空海としては「吽」は今まで存在せずにみんなが困り果てていた
「ん」を表す初めての漢字として捉えていたのかもしれない。

阿吽
みなさんご存じの阿吽
狛犬だったり、金剛力士像だったり
一方が口を開けて、阿
もう一方が口を閉じて、吽
この阿吽に繋がっていく。

阿吽の呼吸というのもそう。

やはり、阿と吽は始まりと終わりとして対のものとして
認識されているんだろう。

種明かし
種明かしをしましょう。
実は「吽」は漢字の中でも極めて特殊な位置付け。

サンスクリット語なんです。

仏教は釈迦が始め、
釈迦はインドの人。

ともすれば、仏教って中国のものと思いがちだけど
インドで出来た宗教。

釈迦自体は全く書き物を残さなかったけど
弟子たちが釈迦没後、思い出し思い出し
釈迦の教えを書き物に残す。

何百年も経って、さらに
それまでインドにあった色んな宗教を取り込んでいって
密教という分野を確立する。
日本に入ってきているのはほぼ全て、密教。

密教の特色のひとつに呪文(真言)というものがある
おまじない、なので
チチンプイプイやテクマクマヤコンみたいなもの。
それ自体には、意味がない。
特に空海の始めた「真言宗」は真言宗というぐらいだから
このおまじないを重要視している。

仏教の書き物は、インドの釈迦のいたあたりの言語
サンスクリット語で書かれている。

それを孫悟空で有名な三蔵法師とかが
シルクロードを長旅し
いっぱい中国に持ち帰る。
みんなで頑張って、中国語(漢字)に翻訳し
それが日本に伝わってくる。

すなわち、日本人が目にしたのは翻訳版な訳です。

空海は、それじゃ満足いかない
サンスクリット語も勉強し
日本語、中国語、サンスクリット語の3か国語に精通した。

そうすると分かったのが
サンスクリット語にはあるけど、中国にはない文字がある

すいません、前置きが長くなりすぎて。

そうです。
サンスクリット語には、「ん」の文字が存在するんです。

中国語って、意味と文字が直結した、 表意文字ですけど
サンスクリット語って、英語や日本語のような表音文字。

中国人もその辺の事情を分かっていて
中国になくてサンスクリット語にある「ん」を表すとき
ひとつの記号で表した。
それが「吽」
牛が口を閉じながら鳴く「もぅーっ」ってやつ

中国としては、その文字が必要な訳じゃないから
サンスクリット語の「ん」を説明するとき以外は一切使われない漢字。

実は、日本でも吽の漢字は阿吽という熟語以外には一切使われません。

サンスクリット語には、日本の50音表みたいに
文字に順番的なものが存在し
一番最初が「阿(あ)」で一番最後が「吽(ん)」なんです。
偶然の一致です。

空海、大発見。
サンスクリット語に精通した者のみがなしえた
「ん」の発見

実は空海としては、どうしてもサンスクリット語を勉強する必要があった。
呪文です。
日本人が、日本語に漢字を音だけで当てて万葉がなを作ったように
中国人も、サンスクリット語の呪文のところは、近い音の漢字を当てた。
般若心経の
ギャーテーギャーテーの部分がそうですね。

これじゃ、本当の発音がわからない。
チチンプイプイはチチンブイブイと書かれているかも知れないからです。
ちゃんとした発音で呪文を唱えなきゃ
効果があるんだかないんだか。

世紀の発見は?
さあ、この世紀の大発見。

困り果てていた皆に
空海が
良いの見つけましたよ
「ん」は「吽」でいきましょうよ
という提案書なの?

ということは、「ん」の発明者は空海?

となりそうなんだけど

残念ながら「吽字義」の中には
今後「吽」を使いましょうとは一言も書いていない。

あくまでも「吽」の哲学的仏教的位置付け。

結果的に言うと
「吽」が万葉がなに加わる事はなかった

なにせ、中国人ですら、知る人ぞ知る漢字ですので

でも、やっぱり凄い人ですよね、空海。
この挑戦に、大拍手です。

すいません
「ん」の発見に時間かかりすぎてますね
次こそは。

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