[岩宿] 相沢忠洋というひと
[岩宿] 一家団らん
[岩宿]3 少年の孤独
[岩宿]4 戦争とおばさん
[岩宿]5 さよなら
[岩宿]6 赤土の壁でみつけたもの
[岩宿]7 趣味から学問へ
の続きです
高縄遺跡の発掘
赤城山の近くの高縄部落で、貯水地の工事が始まった
土器が複数発見されたということで、その土地の有力者にお願いし
遺跡の発掘を行わせてもらえることになった
そこでは縄文時代の早期の段階での土器が出土した
小規模ではあるが、群馬県における縄文文化黎明期遺跡調査の第一号となった
最も古いといわれた土器グループは赤土にはない
その上層部分から出る
あの赤土の壁から出る石剥片(せきはくへん)は縄文文化黎明期のものではないのか
いや、まだこの一ヶ所だけでは少なすぎる
もっと色んな場所で発掘してみなければ
返信
ある日、郵便受の中に一枚の郵便ハガキを発見した
あっ
東京の考古学研究所から
おこがましくも手紙は書いたものの
返信はなかろうとあきらめていた
4行だけの短い文ではあるが、詳しく知りたいとのこと
夢のような気持ちだった
感慨に浸っていると、後を追うように電報が来た
「〇ニチ ユク ヨロシクタノム」
吉田格先生となっている
どのような先生なのか
どうすれば失礼のない応答ができるのか
何も手につかない
改札口で待つ
すぐに分かった
家に案内して、つくだ煮の箱に整理してある採集してある資料を見てもらった
先生はその数の多さに驚きながら
一つ一つ丁寧に解説していただいた
新鮮で大切な知識ばかり
高縄遺跡に行ってみたいとのことだったので、翌日案内
ショベルを借りて実際に掘ってみる
やはり、同じ結果
この遺物グループはおそらく関東最北端の遺跡であり
非常に重要なものであろうと言われた
喜んで帰られたのがとても嬉しかった
ただ、赤土の壁の件は話していない
東毛考古学研究所
今まで、「家族団らん」を追い求める心のさびしさ故に遺物を調査してきた
でも、自分のやっていることは、重要なことなのだ
私的なものではなく公的なもの
となると、学問研究に役立てなければならない
それは義務であると思うようになった
本来学校を出ていない自分には、到底無理な世界だと思っていた
そんな身分ではない
それを上回る気持ちが沸いてきた
決心
この決心を崩さないために形を作る事にした
「東毛考古学研究所」の設立
新聞でも取り上げられ
色んな人が訪ねて来るようになった
遺跡の発掘も携わっていく
ただ、研究所ができたことで収入が出来た訳ではない
持ち出ししかない
喰っていくために行商を続け
残りの時間で、発掘等の調査を行う
いくつかの発掘実績が積み上がっていく中で
いくつかのグループの大先生が来られるようになった
だんだん分かってくるのだが
大先生たちは、学界におけるライバル関係があり
二分三分されている
うかつに重要な事は言ってはいけないと思われ
赤土の壁の謎については
当面、自分一人の胸におさめておくしかなかった